KAKASHI

敷地は郊外の田園都市にある。
周囲はゆっくりとした時間が流れる田舎の風景が続く。

この環境に素朴でありながら、意思を強くもった建築をつくりたいと思った。
帰り道そんなことをぼんやり考えながら田んぼの真ん中で夕陽に照らされたカカシを見つけた。

人間の手によって立てられたカカシ。でもその佇まいは風景にとけあい、以前からずっとそこに存在し、四季のうつろいを見守り続けている自然の一部のように思えた。

このカカシのことを想いながらスケッチを繰り返すうち、質素で無駄が無く、そして力強くあの田んぼで立っているカカシを心に映した。
南北に通り抜ける風の道を確保し、広土間を設け、空間は十字型の柱梁、大屋根。
構造材のみで簡素にそして力強く建築をつくっている。

形あるものは姿を変え、時間の流れと共にある。

しかし心の中の風景は永遠である。

家族の心の風景となることを祈って───　KAKASHI

この建築をいつも小生を応援してくれている施主Kさんに捧ぐ。