23年ぶりに、中国へ。
船で単身中国へ渡った19歳の時から23年。
驚くほど、中国は変わっていた。
当時は、北京駅前の広場に大勢の人達が野宿しており、通りを歩けば、珍しい外国人とばかりに皆がジロジロ見たり、話しかけてきたり、ついにはゾロゾロと後ろをついて来る。
治安も良いとは言えず、腹巻きにパスポートだけをしっかり持って、当時何もかもひっくるめて一日千円で貧乏空腹旅をしていた。
各地で知り合った中国人には本当に親切にして頂いた。
1ヶ月の旅の大半を見知らぬ街角で出会った中国人やイラン人の家、時には会社の寮にも秘密で入れてもらい、寮内の敷地を巡回する警備員に見つからないように、夜中ホフク前進もした。
モンゴルでは、馬で草原を走り、ゲルで寝て、一生忘れない満天の星空を眺めながら、各地を放浪した。
見るもの感じること全てが、僕にとっては生まれて初めての体験で、
あの旅から自分の中で明らかに何かが変わった。
そのおかげで、今、こうして自分の二本足でしっかり大地を踏みしめて、
自分の責任で、自分の思うがままに生かさせて頂いている。
あの旅は僕の原点。
携帯電話もインターネットもない時代、異国にて頼れるものは自分一人。
緊張感一杯で旅していたあの頃とは何もかもが変わり、便利になった。
でも、バックパックと寝袋一つでその日の深夜に着いた見知らぬ街で、まずあてもなく歩いて寝床探しから、という不便な旅は、今から思えば極上の贅沢、極上の苦労だった。
何もかもが容易に手に入る時代。
人は、便利になった分、何か大切なものを失くしたように思う。
僕は、不便さの中にこそ、物事の真理や発見があると、信じている。