4時45分。
ここに来たかった。
数年前に旅したヨーロッパのロマネスク教会群。
その時行けなかった教会…
今回の旅でどうしても行きたくて、ここだけは…と念じて。
人里離れた村の宿に前乗りして、翌朝のミサに備え、夜もそこそこにして早めの就寝。
翌朝4時。宿をそっと出る。外はまだ肌寒い。
街灯一つない暗闇の空。澄んだ空気と届きそうな星たち。
遠くの山のシルエットが月明りで薄っすらと浮かび上がっている。
怖くなるほど真っ暗闇の世界の中、風で消えかかりそうな一筋の灯りを求めて、おそるおそる歩みを進める。
扉の隙間から漏れる灯りを前に、大きな木の扉をぎぃっ…と怖々、中へ。
闇から、光へ。無から有へ。
4時45分。朝のミサが始まった。
そこで感じた想い。
闇の音。
闇の中に音は確かに存在する。
闇と静寂の中、次第に耳の奥が重たくなって空気の音が聞こえてくる。
石の分厚い壁を通して聞こえる虫の音。風の音。そして空気の音。
張り詰めた空気の音が確かにそこにある。
暗闇の静寂の中では、自分の細胞の音が確かに聞こえる。
普段聞こえない音が聞こえる世界。
闇の中にこそ真実がある。
闇の中にこそ真の心の安らぎがある。
そして夜が明けた。